心房細動は、1年間で約50万人が罹患する脳梗塞の最大の原因(30%以上)になるという恐ろしい一面を持ち、さらなる画期的な治療法の進化が望まれている。
孤立性(=弁膜症などの他の心臓病変がない)心房細動に対する治療戦略は、保存的治療(抗不整脈薬、電気ショックなど)に抵抗性の場合に観血的な方法へ進むというのが一般的1)である。この観血的治療の第一選択肢として、多くの場合、内科医によるカテーテルを用いたアブレーションが好まれている。
歴史的には古い従来の心臓外科手術的治療法(メイズ法など)はその“根治性"という利点がありながら“侵襲性=人工心肺や胸骨正中切開"という側面が嫌われ、孤立性心房細動の治療法としては例外的な選択肢の地位に甘んじているのが現状である。しかし、手術手技や手術器械のめざましい進歩により、侵襲性(=患者に対する身体的負担)を大きく軽減する手法が次々と誕生し、心房細動の治療にもその波が押し寄せつつある。
米国のWolfら2)が近年開発した心房細動に対する新しい術式がその低侵襲性と卓越した臨床成績ゆえに脚光を浴びるのを知り、著者らはこの手術法を導入し発展させ本邦で初めての内視鏡下心房細動根治手術を行った。本稿ではこの手術法を解説し、臨床結果について報告する。 |